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2020.06.20 (sat)

レポート

【セミナー前編】「ニューワーカー vol.1 自分らしく仕事をするために〜世界で唯一無二!?の肩書き。ヌードルライターに学ぶ自己ブランディング〜」

2019年12月11日、マークメイザンにヌードルライターの山田祐一郎さんをお招きし、「ニューワーカー vol.1 自分らしく仕事をするために 〜世界で唯一無二!?の肩書き。ヌードルライターに学ぶ自己ブランディング〜」セミナーを開催いたしました。

日本で唯一のヌードルライターとして活躍される山田さんのセルフブランディングの手法や、仕事の広がりについて、ライターのさわだ悠伊さんを聞き手に迎え、伺いました。
「ヌードル」というフィールドに絞った活動をはじめたきっかけや、分野を絞ったことで見えてきたこと、また差別化の先の付加価値を付ける方法など、ライターに限らず、フリーランスの方の参考になるようなお話になりました。
全文を公開しますので、ぜひご覧ください。

【セミナー前編】「ニューワーカー vol.1 自分らしく仕事をするために〜世界で唯一無二!?の肩書き。ヌードルライターに学ぶ自己ブランディング〜」
【セミナー後編】「ニューワーカー vol.1 自分らしく仕事をするために〜世界で唯一無二!?の肩書き。ヌードルライターに学ぶ自己ブランディング〜」

こちらはその前編になります。
 


 

鶴田 真由美 (以下、鶴田):スライドは写真OKということでしたので、何か気になるところがあればぜひ撮影されてください。それでは、講師のお二方をこちらの方にお通ししたいと思います。

今日は、ニューワーカー「自分らしく仕事をするために」ということで、福岡からヌードルライターの山田さんにお越しいただきました。山田さん、よろしくお願いいたします。

 

(会場拍手)

 

聴き手として、鹿児島を中心にライターをされているさわだ悠伊さんにお越しいただいてます。さわださんよろしくお願いします。

 

今日は、フリーランスの働き方、セルフブランディングなど、「ヌードルライター」という唯一の肩書をもつ山田さんに色々とお聞きできればと思います。また会場のみなさんも聞きたいことがあったら遠慮なく聞いてみてください。

 

それではよろしくお願いいたします。

 

山田さんのお仕事

山田 祐一郎 氏(以下、山田):お願いします。改めて初めまして、ヌードルライターの山田と申します。いきなりですが、今日来ていただいてるみなさんの中でライターの方はどれくらいいますか?

 

(会場挙手)

 

あ、そんなにいらっしゃらないですね。ちょっと変わった肩書で何をしているのか気になると思いますので、このスライドを見ながら説明させていただきます。ヌードル +ライターで麺に関することをしてるんだろうな、ということはなんとなくわかっていただけると思うんですけど。ややこしい話ではなく、麺を食べて、麺についての記事を書くというのが本来の仕事です。ただ、ヌードルライターという中だけでも色々な仕事が派生してまして。

 

ヌードルライターの仕事

  1. 麺にまつわる原稿を書きます。
  2. 麺にまつわる編集をします。
  3. 麺にまつわる情報を提供します。
  4. 麺にまつわる商品化や店舗出店のアドバイスをします。
  5. 麺にまつわるイベントを企画します。
  6. 麺にまつわる出店をします。
  7. 麺にまつわる占いまでします。
  8. そして、麺を作るようになりました。

 

麺ばかりの人生です!だいぶバリエーションがあるので、少し変なことしてる人だなあと思っていただければ有難いです。

 

麺にまつわる原稿と編集

まず「ソワニエ」という福岡で珍しく食のことだけを書いた雑誌で、巻末のコラム「老舗のはなし」連載。それから、開業したい、もしくは経営者が店長さんたちに読ませるガチガチの専門誌「そばうどん」。原価、収支、人を何人いれて利益をいくら残すか、メニューがどういう構成でどれが利益を生んでるかとか、ちょっとお堅いものです。あとは、全国紙の「BRUTUS」で「ラーメンとうどんの正解」という特集も書かせてもらっています。

 

麺とは関係ないんですけど「subクリップ」という地下鉄の専門誌は、円楽師匠とか久保田利伸さんとか毎回名だたる著名人の方が来られるんですが、「ごひいきグルメ」という食関連の記事なので、じゃあ山田さんに書いてもらおうっていう広がり方ですね。

 

鹿児島でもラーメン王決定戦のコラムや、「かごぶら」の連載など幅広くしています。福岡のものもありますが、クライアントさんは東京が増えてるような印象ですね。ここまでで、なにか気になる点ありますか?

 

さわだ悠伊 氏(以下、さわだ):クライアントさんが、福岡から東京など首都圏へ広がっていったきっかけなどお伺いしたいです。

 

山田:まさにセルフブランディングで「ヌードルライター」という肩書があったからこそですね。ある時「福岡 ライター」と検索すると一番上に出てきたんですが、それは「麺」も「ライター」も含まれて検索で上にあがってきたと。

 

さわだ:検索で上がってきたっていうのは、みなさん何のサイトに飛ぶんですかね?

 

山田:独立する1年前くらいに、ヌードルライターと遊びで名乗っていたんですが、7年前の2012年に独立して正式に肩書きを入れるようになりました。「その一杯が食べたくて」という麺に関するブログに1日に13,000アクセスとか記録してた時期があったんですが、ウェブサイトを作った時にその数字がひっぱられてきたんですね。

 

さわだ:ちなみに山田さんは、ヌードルが先なのかライターが先なのか。そもそもはどちらが先ですか?

 

山田:ヌードルが先なんですよ。父親が製麺所を営んでいて、製麺機械で作れるものはパスタ以外全部作っていたので、麺をずっと食べていた。タダで食べられる有り難さを昔は感じ

ずに(笑)。福岡のライターは人数的にライバルが多いんですけど、何かに特化してる人があまりいない。そこで「ヌードル」が生まれてきた。

 

さわだ:普通はライターやってて、得意分野を絞ってくっていう流れが完璧なのかなと思ってましたけど、ヌードルが先という。

 

山田:そうですね。24歳からかれこれ17年ライターをやっていて、10年間はただのライター。ファッション誌、音楽誌、スマートなお部屋紹介とか、求人情報誌とか色々書いた中で、上司や編集者に麺に関する記事で毎回褒められて、やっぱり麺が好きだよなあと。

 

麺にまつわる情報提供

山田:あと、テレビはNHKさん以外の福岡ローカルには全部出ていて、全国版にもちょっと出させていただいてます。僕は「一日一麺」っていうのがモットーで活動していてずっと麺を食べてるので、一年間で500杯以上は食べている。一番(たくさん)食べたのは、鹿児島の雑誌の企画で、海岸沿いに車を走らせて美味しそうなラーメン屋に全部入るっていう企画。

 

さわだ:それは(笑)

 

山田:そのときが一日13杯ですね。最後には、牛丼も名物でおいしいよと言われて、牛丼も食べました。

 

さわだ:完食されるんですか?

 

山田:そうですね、残さないという流儀があって。麺ばっかり食べれていい仕事だなと思うかもしれないですけど、結構修羅の道(笑)。そういった情報のストックがあるので、リサーチだけで情報提供してお金をいただいたり、出演料いただいてタレント枠としてロケに出たりもします。

最近は気乗りしなくてあまり出てませんが、そんなことしてるとラジオも声がかかって、LOVEFMさんでは15分コーナーでうどんに関する話を色々喋ります。これは例えば、僕がカツ丼ライターとしてカツ丼についてめちゃくちゃ詳しくてマツコの世界とかに出れるような、「特化していく」という事例ですね。

 

麺にまつわる商品化

山田:これだけ食べてるので10キロくらい太りましたが、その分経験があるので商品化とか店舗出店のアドバイスをしてもらえないかと声がかかりました。「みんなのらぁめん」で検索していただけると。佐賀にある製麺所「みろく屋秀麺工房」さんから、新しくて今までに無いお土産が作れないかという依頼だった。ざっくりしてるでしょ(笑)。丸投げで、どんな感じのもの作りたいんですかっていうのから始めて。

みろく屋さん、僕、デザイナーさんもみんな、ちょうど小さな子供がいたりもうすぐ生まれるという状況だったんです。うどんって、美味しいんだけど化学調味料が気になったりすることもあるんですよね。特にカップラーメンだと「体にいいもの食べよう」とは矛盾するので、「簡単に作れて体に良くて優しくて、それでいて美味しいラーメンだったら最高じゃないか。作れないかな?」と思って作りました。

 

これむちゃくちゃ難しかったんですけど、アミノ酸系を入れないとスープとして保存期間が伸びないし、カビが生えてきちゃう。それで、紅茶のティーバックみたいなのに出汁を入れて、お湯を注ぐといわゆる天然出汁ができちゃう物を考えました。本当は豚骨とか使いたかったんですけど、豚と牛だけは絶対保存料関係をかませないとだめで、難しかった。鳥はなんとかできたので、スープは鳥と魚介系の合わせ出汁に。一番ネックになるのは醤油だったんですが、僕のアイデアで醤油を切り離そうと。

みなさん鹿児島出身ですよね。比較的甘い醤油がお好きだと思うんですけど、関東はちょっと違って少ししょっぱいですよね。醤油ラーメンって、大体は関東か関西とかどちらかの味に寄せてあって、中々自分が好きな故郷の味に遠い。そこで「醤油さえ切り離してしまえば、ラーメンは自由になるじゃないか!」という発想が浮かんだんです。出汁パックにお湯を注いで、ご自宅にある醤油、例えば北海道の醤油で作れば北海道醤油ラーメンに、四国の醤油で作れば四国醤油ラーメンになる。今結構売れていて、パッケージが洒落てるのでBEAMSさんとかセレクトショップでもお土産で置かれるようになってます。

 

さわだ:へえ~!ちなみに鹿児島で扱ってるところはないんですか?ネットとかでは?

 

山田:今のところ無いような気がしますね。ネットでは買えます。半生麺なので2、3ヶ月はもつかな。我が子ももうすぐ3歳で小さいんですけど、このラーメンはむしゃむしゃ食べるんですよ。あと、ベビースターラーメンもプロデュースしていて、九州とんこつ味っていうのを作りました。顔入れましょうかって言われて、キャラが被るので遠慮させていただいたんですけど(笑)

 

さわだ:そういう依頼は直で来るんですか?

 

山田:そうですね、ヌードルという柱があったので、福岡県から依頼が来たんですが。「ラー麦」ってご存知ですか?福岡県でラーメン専用の小麦を作ってるんですよ。茹で伸びしにくいっていう特徴は一応あったんですけど、10年くらい前の最初は美味しくなくて全然ダメで。その時にも一応、普通に記事を書いたんです。

それから月日が流れて、種まきや収穫のタイミング、水のコントロールとかで近年すごく美味しくなって、これは応援したいなと。その時「ラー麦の需要拡大」という大きな指名をいただいて、ギャラも大きいプロジェクトだったんです。

どうしたら捌けるか?を考えて、口コミでラー麦を使うお店が増えていくように有名店と雑誌でコラボしてみたんですが、それだけだと普通で面白くないし、ラー麦の麺が1袋だいたい25キロくらいだから1つの店につきせいぜい2、3袋で終わっちゃう。

それがベビースターだとトン単位なので、めちゃくちゃ使ってもらえるんです。しかも麺を揚げると色がすごく鮮やか。ラー麦が白っぽくなって気持ちの良い色合いで、揚がった風味が香ばしい。ベビースターの担当の方も、「こんなにベビースターに合う小麦があったんだ。今まで使ってる素材以外で、しかもこんなに安く!」ってびっくりされて。

よかったら、ベビースター九州限定とんこつラーメン味をお土産に(笑)

 

麺にまつわる店舗出店のアドバイス

山田:博多やりうどん」について。博多うどんは結構歴史があって、四国には絶対負けてますが発祥説が博多にありまして。その老舗のひとつで、地元の人も食べてたんですが当たり前すぎて雑誌で取材に入ることもないし、特に変わったものがあるわけでもなく日の目を見なかったんですね。

西鉄さんが運営に携わっていて、何十周年かのタイミングだったらしく部長さんから「お店をリニューアルしたい、どうしたらいいでしょうか」ってふわっとした連絡をいただいた。見た目や空間づくりはインテリアコーディネーターの担当者がいて、僕は主に商品構成のアドバイスをしました。

 

あと博多のごぼう天うどんって食べたことあります?大体かきあげみたいな細く切ったものを揚げた揚げ物を載せたりすることが多いんです。博多っていうと「やり」が有名なんですよ。黒田節の武将のやりが日本一長いというエピソードがあるので、ごぼうをやりに見立てて長い天ぷらにしたら、難しくないし他にも無いしちょっと面白いんじゃないかと。

おかげさまでテレビとか雑誌とかメディア露出が結構増えた。福岡空港、西鉄福岡駅にも店舗があって、同じようなものが食べられる。何気なく食べてたやりうどんですが、「こんなに美味しかったんだ」「こういう新しい取り組みしてるんだ」となる、そういったサポートをしてます。

 

麺にまつわるイベント

山田:博多区からの依頼で、博多の歴史ガイドを企画・実施しました。日本、「和」が素晴らしいという事を博多の街で体感してもらう感じ。例えば、お昼に街歩きすると何か貰えたりとか、寺社仏閣でスタンプを集めると博多水引のオリジナルのグッズがもらえるとか。僕は、せっかく博多に来たなら博多うどんの出汁を堪能してもらえるように、特に海外から来られた方に和食のひとつとして訴求できるので、うどんのアイデアから入ってます。

 

まず「博多赤ちょこべ」で2種類のうどんの食べ比べをしました。博多うどんは基本的に先に麺を茹でておいて、お客さんが来たらちゃっと温めてつゆをざっと注いで「へいお待ち」で食べるので基本的に柔らかいんですけど、茹でたてで食べると全然違うんですよ。コシにもしなやかなコシと力強いコシといろいろあって、茹でおいたものと茹でたてとを同じ店で食べてもらうと「あれ、これって博多うどん?」「これってどういったものかな?」となる。その答えは無く、どっちも博多うどんだから。そうすると次うどん屋さんに行った時に見方が変わるし、博多で食べ歩いてても楽しみ方が増えて、うどん自体の啓蒙にもなる。

 

次は、ザ・博多うどんのお店と、博多にあるさぬきうどんのお店と、2つで食べ比べをしました。これは露骨に違うのでお客さんもテンションあがってましたね。さぬきはうどんの量が少なくて、大中小で食べれるのでハシゴしやすいんです。普通の量だとまず無理だから博多うどんも量を少なくしてもらって、博多のうどん屋のハシゴは初めてっていう方ももちろんいたんですけど、すごく楽しんでいただいた。

 

そういう風に、「どうしたら僕と同じように麺を楽しんで食べてもらえるか」「麺フリークを増やしていく」という着眼点で企画を構成しました。他には、「ここはこういう店に声掛けたら楽しいんじゃないか」とかラーメンの店舗のセレクトもアドバイスします。

 

麺にまつわる出版

山田:うどんの話(2015年)』は出版社を通さない自費出版で、取次とかも通せないので流通もぜんぶ自分で開拓をして、全部自分でしました。10冊、30冊くださいと言われて段ボールに詰めて送るとかいうことを全部自分でしないといけないので結構大変なんですけど、全部自分の収入になる。

 

一冊2,000円です。ちょっと高いと思われたでしょ?わざと高めにしてます。自費出版なので、大手がバンバン売ってくれるものでもないし、自分で作ったものなのですぐ読まれて消費されるのが嫌だったんですね。今うどんが流行ってるから欲しいなって人が、1,000円だと買っちゃうんですよ。で、読まずに本棚の上に置かれちゃってるみたいなのはすごく悲しい光景で、それは嫌だなと。2,000円だったら元取りたいから一生懸命読みますよね。だからあえて値段は高めにしてます。3,000部刷ってるので単純計算すると600万ですね。諸経費かかるので全部自分のものにはならないですけど、結構な利幅です。

 

秘蔵の一杯(2018年)』は、出版社から出したので印税が入ります。ここだけの話、僕の場合は7%で印税が定まってます。東京の大手の出版社さんで、自費出版でほとんど実績がない僕の7%は結構高めです。大体5%くらいと聞きますから、あんまりもらえないです。めちゃくちゃ売れると良いですけど、3,000部くらいだと利益にはなりにくい。1冊売れると大体84円くらいが僕に入ってきます。宣伝、流通、本屋さんに挨拶にいったりとかしなくていいので、楽は楽です。

 

さわだ:『うどんの話』は、例えば本屋さんに置いてくださいと話をしにまわられたんですか?

 

山田:僕がヌードルライターっていう肩書を作った時の方針なんですけど、営業はしない。根が優しいので、押しにくいというか(笑)あと、自分から営業にいくと下からいっちゃうので良い条件になりにくい。向こうから書いてくださいっていう場合と自分から書かせてくださいっていう場合では、ギャラがやっぱり違うかな。友人関係が本屋さんにもいるので、初めは10件くらいからスタートしたんですけど、最終的には結構取引先が広がりました。

 

自費出版だと部数が少ないから、どこでも買えるというよりはわざわざ買いに行く本になる。博多駅の丸善、ジュンク堂、個人店、どこでも買えるっていうことにしなくても、ブックスキューブリックさんにしか置いてなければそこでしか買えないから、みんな買うわけですよ。

何故本が売れたかというと、ブログですね。食べ歩きの記事書いたら1日3,000~5,000アクセスくらいなんですけど、そのうちお金出して記事買ってもいいかなという方が5人に1人くらい居るので、1,000冊出したら確実にポンと売れるだろうと。取引先もそんなに沢山要らないと思って、キューブリックさんでしか買えない状態にしていた。

そしたら自然とブックスキューブリックさんの売り上げランキングが週間・月間ぶちぬきで高かったんですよ、まあそこでしか買えなかったからなんですけど。そうなると、うちもこれ置かなきゃやばいんじゃないのっていう風に、他のところにも取引が広がっていきました。

 

さわだ:良い営業、宣伝の仕方というか。狙ったわけじゃないかもしれないですけど。

 

山田:ブックスキューブリックの大井さんという店主の方がすごい名物店主で、目利きもセレクトも素晴らしいんですけど、大井さんの所で売れるのが一番嬉しいし、そこで売り上げになってくれると大井さんも喜ぶし。根本的にそれがあって、後で増えてきてもそれはそれで良いと。

 

さわだ:自費出版というところでご質問なんですが、今の時代だったら、こだわってきちんとしたのを作りたいからクラウドファンディングされる方も多いと思うんですよね。2015年に出版された時は、それほどクラウドファンディングがメジャーじゃなかったと思うんですが、もしそのときにクラウドファンディングが普及してても、自費で挑戦されたと思いますか?

 

山田:自費で。クラウドファンディングは利用しなかったと思います。

 

さわだ:それは、何故?

 

山田:クラウドファンディングだと手数料とられちゃうので。5万部売りたいとか桁が違うとそういう手法に出てたかもしれない。でも沢山売ろう、これで一発当ててやろうとかじゃなかったし、少額だったので。原価もそんなにかかったわけではなく、自分で文章書いて写真撮って、デザイナーさんの発注とイラストの料金、あとは印刷費ってところ。

 

さわだ:初期投資として必要だっただけではなく、自分でおさめられる範疇で。

 

山田:そうですね、妻の同意を得まして(笑)ここまでだったらまあ良いんじゃないかと。結果的に、特に「うどんの話」は出して良かったです。

 

麺にまつわる占い

山田:実はヌードル占いっていうのをイベントでちゃんとやってたんですけど。簡単にいうと、僕がいくつか用意する質問に答えてもらって「あなたの今の気分」みたいなヌードルやお店をぴたっと当てますというものです。質問に答えていくと、味の嗜好やどのエリアに住んでるとかがふわっと分かるようになってる。僕はお店が頭に入ってるので「今絶対ここが美味しいとこ」って。実際行ってみてくれた方が「本当に美味しかった」と。今の気分かどうだったかはわからないですけど(笑)

 

さわだ:それは福岡県でなくても大丈夫なんですか?

 

山田:九州は、そうですね。機会があれば呼んでもらえれば(笑)これは、麺を楽しく食べてもらうためなんです。僕はヌードルライターなので「麺を食べたい」「麺が気になる」「健康のために食べたい」とか麺を食べる人が増えるほど読者の予備軍が増えるので、どんどん麺をみなさんに好きになってもらいたいんですよ。そこが土台にあります。こういったことをすると楽しんでもらえますね。

 

麺を作る

山田:僕は製麺屋の長男です。

例えば父親が新しい卸先にちゃんぽんの麺を納めたいとなると、今のちゃんぽんを変える研究のために、美味しいと言われてるちゃんぽん屋に毎日行き、1日に2ちゃんぽん、1週間14ちゃんぽん食べたりして。でも全然麺が嫌いにならないし飽きない。「麺」だから良かったんですね。

 

東京にもラーメンライター結構いるんですけど、まあ飽きますよね。麺好きで耐性ある僕でも年間500ラーメンだとちょっと嫌かなあと思います。父や僕は色々な麺を作っているので、ラーメン、ちゃんぽん、焼きそば、うどん、色々な麺を食べて生きてて、色々な差異が楽しめる。ラーメンを食べてうどんのようにを感じるとか、ちゃんぽん麺にうどんを合わせて、それはうどんなのかちゃんぽんなのか、みたいな。

 

色々な麺を食べてたので、英才教育というか麺の面白さを幼い頃から知れていたのは有り難かった。父から事業承継して、個人で小さいんですが製麺の方も社長になりました。

これから三部門になりますね。ライター部門は僕、製麺部門は僕と父、飲食部門は妻と僕。家族経営なんですが仰々しく書くと三部門、トライアングルでやっていこうと。麺に関する編集とかは今まで自分ひとりでやってたけど、商品化は外からの依頼だったので、実際に自分で作って食べてもらいながら開発して。

2020年の1月3日から山田製麺という屋号で、宗像市の柞原という宗像大社のわりと近くで、製麺所を開業します。妻のお店がちょっと離れた町でしてたんですけどくっついて、新しい製麺所では、製造、直売、そこで食べてももらえるし、試食もできる。そういう風な感じです。

 

さわだ:もし今後、麺にまつわる事業やトライしたいことが増えてきたら、トライアングルから四角形になったり五角形になったりする可能性もあると?

 

山田:したいですね。

 

さわだ:やっぱり多方面で立体的に麺にまつわる仕事を広めていきたいなという。

 

山田:そうですね。ビジネス的なものじゃないですね。儲けたいから四角形、五角形にしたいのではなく、好奇心ですね。

具体的に考えてるのが、製粉部門を作りたい。殻付きのままの小麦は全然流通してなくて、農家さんとの直取引か、ごく稀に販売してる所から買うしかない。挽き方で味が変わるので、そういうのを突き詰めてきっとしてみたくなるんじゃないかな。

加わるならそこでしょうね。四角形になったらいいですね、してみたい。製粉は、すっごく高くて中々チャレンジは…軽く四桁はしちゃうので。ちっちゃい石臼でやるなら三桁でいけるかもしれないですけど。

 

なぜ、ヌードルライターに?

山田:麺には幼いころから触れていたというのもあるんですが、ライターのライバル多い問題がありました。戦いがあまり好きじゃないので、妬みとか嫉妬とか「あの人があれ書いてる、くそ、俺も書きたい」とか「なんで自分じゃなかったんだ」とかあんまりしたくない。

差別化すると、そういうスパイラルから抜けられますね。2012年にネット検索した時に他に誰も出てこなかったので。一時期女性の方で、Google検索の8、9ページくらいに出てたんですけど、その方もあんまり見なくなった。製薬会社、医療系、農業、水産、ライターって沢山あって、狭めちゃうと危険かな思ったんですが、結果的には楽ですね。絶対に有利だと思います。自己責任ですけど(笑)

 

あとは、自由に働きたい問題。みなさんライターじゃないので実感しにくいかもしれないですけど、ライターっていうと基本的にフリーランス。僕は一応2社サラリーマンライターをした経験がありますが、そこはライターの人ばかりじゃなかったし、働いた時間=収入になる。嫌な事をするストレスを強く感じてしまう性質なのでフリーになったし、僕の場合は結果向いてた。

 

ヌードルライターに病院の記事書いてくださいって依頼は来にくいですよね。それはそれで機会損失なんですけど、僕は麺の記事書きたいし、麺の記事だと他のライターより少し上手いと思うんですよ。肩書を立てていると、そこから外れたものが自然と初めから来なくて、専門性になる。依然として麺が好きだし書いてて楽しいことばかりなので、僕は、ライターのみなさん絶対大丈夫だよと思うんですけど、中々振り切ってくれない。自由になると思うんですけどね。

 

さわだ:振り切れない人の一員ですね、私も。断るともう次が無いかもしれない。ライターに限らず、フリーランスだとついつい何でも屋さんになっちゃうっていうのは結構あるあるだと思いますね。保身にまわっちゃうというか。

 

山田:不思議なことに、そういう仕事しか来なくなるし暇にならないんですよ、続けていくと。なのでその方が良いなと思いますね。

 

あと僕は、ラーメンだけ食べてるラーメン専門家の言うことは信じません。グルメを知った上でないと、その麺の立ち位置がわからないと思うんですよね。毎食カップラーメン食べてて世界一詳しいですよ、カップラーメンだったらどれが美味しいとか全部言えますよと。でも実際のラーメン店にいってないと、ずれちゃう。本店の味と似てるかどうか。今カレーが流行ってることを知らないで、カップラーメンのカレーの流行りを言えますっていうのはどうなんだろうと。リアル店舗のカレーをちゃんと食べてどういうカレーが美味しい、こういう調味料が良いというのを知った上で、「カップラーメンのカレーはこれで決まりです」っていう人の方が食べてみたくなりません?

 

さわだ:説得力ありますね。

 

山田:あとは、麺類はだいたい1,000円しないんですね。何百円で食べられるのが麺の良さ。B級グルメと言われていて値段が高くない分、そこだけの世界だと広がりが出ないんですね。お寿司やステーキも食べて、和食とか色々な食のグレードやバリエーションがあって、その中で麺はどういうところにあるんだろうというのを分かった上で書いた方が良いなって。色々食べてると他のグルメもそこそこ詳しくなって、自分のものさしにもなる。カレーも好きでよく食べてたんですけど、比較対象があって詳しくなるので、結果的に仕事になるという事もある。

 

さわだ:それは自分の中で、興味が大枠でいうとグルメにあって、麺もグルメのひとつだから、麺にこだわらず自分のやりたい事だったら麺以外の仕事も受けると。

 

山田:そうですね。肩書は自分の可能性を閉じ込めるものではなくて。名乗った肩書きの見え方をされても、自分がどう判断するかは自由なので。

 

面白いと思ったら住宅関係の連載も持ってますし。福岡で「麺=山田」だねっていう認知が広がってれば、僕はカルチャーとかも好きなので、あとは自由に自分が書きたい事を。だいぶ違うと思うんですよね。自分のやりたいことを大きく主張した上で、そこでわかってくれるような「こういうのも好きでしょ」っていう仕事は、「あ、嫌だな」って思ったりミスマッチがほとんど無い。僕を理解してくれるクライアントさんで、「麺が好きでいつもブログ見てます。住宅関係の仕事受けてくれませんか」って言って、取材の時のお昼ご飯は必ずご当地の美味しい麺のとこに連れて行ってもらえたり。

 

さわだ:良い感じに、麺がフィルターに、振るいにかけてくれてるみたいな感じなんですね。

 

山田:そうですね。とはいえ、好きなことでもツライものはツライ。ヌードルとライターいう肩書で数えきれない仕事に恵まれてきました。飲み屋のおっちゃんに絡まれると、「フリーのライターで、ヌードルの専門です」って言うと「なかなか良い仕事してるな、それで食っていけるか」とか結構聞かれますね。

フリーランスだとそうなんですかね、マウントとりたがりますよね。稼いでたときは稼いでたので、部長クラスの方だと黙りますね(笑)

 

後半に続く
【セミナー後編】「ニューワーカー vol.1 自分らしく仕事をするために〜世界で唯一無二!?の肩書き。ヌードルライターに学ぶ自己ブランディング〜」